[]ツシマヤマネコ

 西表島に生息するイリオモテヤマネコと並び、絶滅の危機に瀕している極めて貴重な日本固有のネコに対馬ツシマヤマネコがある。今、このツシマヤマネコがここ吉祥寺の井の頭動物園に飼育されている。吉祥寺にやってきたのは昨年11月19日のことであった。



 絶滅の危機を回避しようとこうしてノウハウのある各地に試験的に固体を散らしている。繁殖を考え、オスとメスのつがいに。オスは環境省野生生物保護センター(長崎県対馬)から、メスは福岡市動植物園からである。井の頭公園では、ツシマヤマネコに近いアムールヤマネコが飼育されている。韓国ソウルからやってきた4頭が今では20頭以上に増えた。その他にもフェレットなど難しい動物の飼育、繁殖にも成果を挙げている。こうした技術や経験をツシマヤマネコの飼育にも応用することが期待されている。



 天然記念物のツシマヤマネコ。個体は70頭から100頭ほどしかいないと推定される。乱開発で生息地が減ったこと、モータリゼーションでの交通事故死、ネコエイズなど一般のネコからの病気の感染拡大などが理由である。いずれにせよ人間がもたらしたものであることにかわりはない。



 なんとも残念ながら、動物園にやってきた人にはこのツシマヤマネコを直接見るチャンスはない。一般公開されないからである。将来はこの2頭を野生に戻す可能性があり、いたずらに人間になつかせるのはいけないと判断されている。飼育係でさえも必要最小限の接触にとどめている。井の頭自然文化園には動物病院があり、野瀬修央氏らが注意深くネコの野生を失わせないように配慮しているそうだ。



 かつて、学名ニッポニア・ニッポンという名の日本種の朱鷺を絶滅させてしまった日本。ヤンバルクイナイリオモテヤマネコアマミノクロウサギなど他にもこうした固有種は多い。決して絶滅させてはならない。だれからも支持されるわけではない愛国心教育に熱を上げているような方々も、こうした「日本の伝統」、「日本固有の自然遺産」を守ることには大方の日本人が賛成してくれるのであるから、もう少し、固有種の保護の問題にも興味をもたれるべきだろうと思う。