[]楳図かずおの新居

 「まことちゃん」の作者として有名な漫画家、楳図かずおがここ吉祥寺の吉祥寺南町に建築中の自宅が周辺住民2人と揉めている。



 「異様な外観になる計画で、閑静な住宅街の景観を破壊する」



 ということから何と民事裁判で工事の差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てている。



 楳図の自宅の敷地は約235平方メートルで、3月に着工した。外壁を幅60センチ幅の赤・白の縞で塗装する予定、屋根に「まことちゃん」の像を設置したり、ファンに開放する施設も作るらしいが、住友林業はそういう計画はないという。



 普通の民間人が自分が暮らす家を造るのだからだれの許可もいるわけはなく、着工してから施工主の住友林業が説明を求められて計画がわかった。たしかにそこは井の頭公園が近いとても閑静な住宅街で、赤白のストライプ模様の建物は目立つ。だが、周囲の住民に「景観利益」というものがあって、それをこれによって侵害されるのであろうか。



 火葬場や墓場、ライブハウスや風俗営業施設ができるわけではない。赤と白がいけないのならば、黒と白、あるいは緑と白ならば良いのであろうか。



 塗装だけでも差し止めたいと息巻いている原告二人であるが、



 「あんな建物は色彩の暴力であり形の暴力」



 とまでいえるかは疑わしい。心に赤と白のペンキを塗られた気分だ、と怒っていらっしゃり、ここはテーマパークではないというが、楳図にしてみれば大きなお世話であろう。建築許可を出した武蔵野市も、建築基準法、都の景観条例にも抵触していないので、デザイン問題で争うならば一定数の住民合意で地区計画か建築協定を締結するしかない、と説明している。



 屋根にはまことちゃんをかたどったものになるのか、そうではないのかはわからないが、まことちゃんの目をイメージした丸窓が設置され、楳図がそこから外を眺めて楽しむ予定らしい。



 原告はそれが飾りの煙突かと思っていたがこの丸窓から、毎日あの方の顔が見えるのは耐えられません、とまで言って露骨に不快感を示す。だが、それこそ楳図への無礼な暴言としか言いようがなく、しかもこの住民は楳図の顔も作品も見たことがないというからどうしようもない。



 実際、この原告2人以外の近隣住民は冷静で、楳図ハウスの真裏にあり庭の西側を赤白壁でふさがれる女性も西日の日照はあるし、全く気にしないので反対運動に参加するつもりはない、という。



 楳図はもともと吉祥寺の住民。吉祥寺はアニメ作家がたいへん多く暮らしている。赤白シャツで外出する彼は近所では割と有名である。この件に関しては弁護士に任せてあるのでノーコメントらしく、東京地裁の和解勧告も拒み、デザインは変えないという。



 現在、施工主の欄が建築許可証のボードで「U様」となっているが、これは極めて異例の措置らしい。