[]ヤマハ CF?

13458d48.JPG ロシアに、スビャトラフ・リヒテルという不世出の天才ピアニストがい

た。彼が心血を注いで監修、制作の細部にまで関わって作ったピアノがヤマハフルコンサートグランドピアノである。



 今から20年以上前になる話、世界のヤマハが総力を上げて設計、開発したピアノが3台あった。これら3つのピアノの1台は細部までそっくりスタインウェイのそれを模倣して設計された。



 だが、リヒテルはそのスタインウェイ亜流ピアノを選択せず、新しく開発、設計したCF?と呼ばれたピアノを作り出す。彼はこのピアノの完成記念にヤマハの楽器工場に出向き、工場の従業員、クラフトマンたちの前で工場内演奏会を開催したことは有名。NHKプロジェクトXでも紹介されたことがある。自ら製作に関与したピアノであるため、リヒテルはこれを絶賛したが、これが本心だったのか怪しい、といぶかる評論家、外資系ピアノメーカー関係者も多い。これらの研究成果から生まれたのが、発展的な後継機種、CF?だといわれている。CF?がべーゼンドルファー、スタインウェイなど「超」がつく一流ピアノといえるかどうかは別にして、優れた一流の楽器であることにかわりはない。

 

 日本人にとってヤマハピアノは、ヤマハ音楽教室と並んで日本の音楽会に多大な影響をもたらした立役者的存在。音楽教室との波及効果を狙ったヤマハのきつい営業方針を悪く言う人もいるが、しかし、もし、日本にヤマハ楽器がなかったとしたら、相当に世界の音楽世界から立ち後れたことは確か。

 

 例えば、クラシックピアノでチャイコフスキーコンクールで女性として初優勝、現在、世界屈指の上原彩子は、これまで一切、音楽大などで教育を受けず、ただひたすらヤマハ音楽教室へ通い、その発展として現在の地位、すなわち、世界超一流のピアニストにまで登り詰めたと言うから驚かされる。



 また、名が似ていてややこしいが、ジャズピアニストの上原ひろみヤマハ音楽教室で研鑽を積み、法政大学法学部に進学。その後、ヤマハから奨学金を得られたため中退してボストン、バークリー音楽院に入学しなおした経歴がある。二人の上原はヤマハなしには誕生しえなかった。



 写真は、昨日、武蔵野公会堂で三枝寛人さんが演奏したヤマハCF3。市販価格が四百数十万円するようなグランドピアノである。だが、あまりひきこまれていないようでまだまだこなれていないといわれる。もったいない話だ。