[]田無農場 休日特別公開

fa423730.JPG 私のとっておきの場所の一つに西東京市にある東京大・田無試験地がある。かつて農学部駒場から本郷へ移転した際に1929(昭和4)年に東京帝大農学部・林学科田無苗圃として林学第二講座によって創設された。造林学研究を主たる目的に作られたもの。入り口を入った瞬間から別世界の森であるが、すぐ左手に昭和初期の雰囲気を実に良く伝える白い木造の平屋建て庁舎がある。

 

 隣接して広大な東大附属農場、敷地内に東大アジア生物資源環境研究センターなどがあり、農学生命科学の研究・教育拠点になっている。杉、檜、松、欅、メタセコイヤ、ポプラなど多くの樹木が育てられており、中でも杉は充実していて京都、秩父、海外の品種など各種いくつかを比較することができる。庁舎前のメタセコイヤは都心で見られる樹木としては有数の巨樹。



 総面積9.12haと広大。誠に残念なことに、ここの一部を道路整備のために売却し目の前の所沢街道、新青梅街道からひばりヶ丘駅に直結するバイパスを整備することになっていて農場そのものは道路以外の部分で残るがかなりの面積が道路で分断され、交通量が激増する。本当にもったいないことだと思う。



 平日は一般の人が散策することができる。特別の許可がないと園内の自転車走行、お弁当や飲み物の持ち込みは不可。また、普段は平日の9時から16時30分までしか見学はできないが、年に二度ほど、休日に公開される日がある。春と秋が恒例。今日、27日はちょうどその日に当たっていた。東久留米へ出かけた帰り、前を通り過ぎたら「休日公開」の看板が出ていたので立ち寄ってみることに。

 

 学生時代からすでにここは全面的に売却されて道路になったり、開発されることになると聞いていたが、計画が変更になってまだ当時と変わらず同じままだった。技官の職員と20分ほど立ち話をしたら今年から測量が始まりついに道路建設が始まる予定らしい。元々、大学関係の利用率が極端に低く、むしろ一般公開利用が多い千葉県検見川の運動場をこの農場の代替施設として農学生命科学研究地に模様替えする予定だった。検見川に隣接する千葉大の農場も購入する予定であった。だが、その後千葉大が売却を渋って中止することになり、また、体育会系組織の発言力が強く猛反対に。サッカー、アメフト、テニス、ゴルフなどの競技ができる施設として残すことになり、そのあおりで田無の試験地は道路整備のために部分的に売却されるだけで残ることになった。体育会系の強い声がこれに限っては良い方向へ響いた。

  

 休日公開とはいえ知られていないためか私以外ほとんどだれも人がいない。懐かしい風景が続く園内を歩いていたら、明るい日の光が大きく差し込む林の草地に。空中を黄緑色の小さな青虫が浮遊していた。見上げると上空の梢から糸を吐き出しながらゆっくり下降している真っ最中。30秒ほど見つめているとそのまま草地にゆっくりランディング。珍しい光景だった。天から舞い降りる青虫の静かな佇まいをしばし凝視し楽しんだ。



 「やあ、おめでとう。」



 天空の青虫からのお祝い。

 

 悲しいことがあったり、気持ちが落ち込んだような時にここへ来ると良い。別世界の樹木たち、梢から差し込む木もれ日が夢を見ているかのように美しい。新緑が輝くゴールデンウィークの最後、6日に休日公開がもう一度予定されている。

 

 東大・田無試験地、付属農場

 〒188−0002 

 東京都西東京市緑町1−1−8



西武池袋線ひばりヶ丘駅南口、西武新宿線田無駅北口から

 西武バスで「六角地蔵尊前」下車 すぐ